えれめんつ

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コウは夢を見ていた。


それはあまりに懐かしく、そして最も忌まわしい夢。


そしてそれは、コウが彼女の声を聞き、姿を見、そして温もりを感じた最後の記録。


唐突に闇が押し寄せ、彼女を引きずりこんでいった。


コウはそれを止めようと必死に追いかけ叫ぶが、届かない。


彼女も闇に抗って必死に抜け出そうとし、何か叫ぶが、彼女の兄には、届かない。


結局彼女は完全に闇に取り込まれ、やがてコウの髪と眼は、彼女と同じ真紅に変わっていった。



その闇に取り込まれた少女は『桜井ハルカ』。自分の妹だった、ヒト。




「ハルカ!」

コウは毛布を跳ね除けて起き上がった。体中から汗が噴出している。

辺りを見回すと、自室で寝ていたらしいことがわかる。月明かりが闇を裂き、見慣れた本棚を映し出していた。

窓が開いているらしく、後ろの方から風が吹いてきて髪を優しく撫ぜ、月明かりを反射している硝子製の風鈴を、ちりんと涼しげに鳴らした。

やがて布の擦れる音がして、暗くてよく見えない場所、部屋の隅にいる何かがもぞもぞと動いた。

「ん・・・コウ君、起きた?」

ユキナの声だった。口調がどこかぼんやりしている。

「ぁ、ユキナさんか。ごめん、寝てた?」

「―――だいじょぶ」

今の聞かれたかな、とコウは思ったが、彼女は寝起きで意識が朦朧としており、「ただ大きな音がしただけ」ぐらいにしか、コウの叫びを認識していないようだった。

ほっと胸をなでおろして、傍らにあった小さな目覚まし時計を見ると、夜中の三時をまわっていた。コウはそれを見て気づいた、いやその前に気づくべきコトを口にした。

「そういえば、なんでユキナさんがここにいんの?」

「看病ー。あー眠い・・・」

ユキナは目をこすりこすり立ち上がると、背伸びして紐を二度引っ張り、電気をつけた。眩しさに一瞬目がくらむ。

そしてコウの正面に腰をおろすと、彼の体をしげしげと眺めはじめた。

コウは焦る。

「っな、何?」

「ちょっとシャツ、脱いでみてよ」

「ぇっ、えぇ!?」

「いーから早

と言ってコウの汗だらけのシャツの裾を掴むと、

 くぅ!」

強引にめくりあげてしまった。

「おぃ、何すんだよ!」

それを無視して、コウの胸に手を当て始めるユキナ。

その手の冷たさに、そして女の子に胸を触られたコトに動揺して、コウは初めて聴診器を当てられた子供よろしく、奇声をあげて身をよじらせてしまった。

「っひゃ!?」

「ふ〜ん・・・お兄さん、意外と胸板厚いですねぇ」

とユキナは舌なめずり、はせずに、腹へ背中へと手を這わせていく。

「おいって!何やってんだよ!」

あまりの快感、もとい不快感にコウは叫び声をあげるが、抵抗はしない。

なんだか妙な状況になったぞ、などと考えている内、ユキナはシャツを元に戻した。

「うん、だいじょぶだね」

と言って、にこりと微笑む。

「な、何がだよ」

やや息を荒げて、コウが噛み付く。

「ちゃんと治ってるね、傷」

「はぁ?」

「私頑張ったんだよ?徹夜で治癒(ヒイル)かけたんだからねっ」

コウは、徹夜で?と反応した後、思った。徹夜で何をしてたって?

「徹夜で・・・何してたって?」

「治癒・・・あ、そうかゴメンね。『傷治してた』の」

と、問われた彼女は力なく笑った。電灯の明かりの下でよく見ると、その目の下にはくまができている。

「そんなコトまでできるのか?」

「うん、サブの『力』だけどね」

『力』か、とコウは思った。ただ単純に、それをそうなのだ、と認識していた。

もう前ほどの(と言っても昨日)驚きはもうなかった。これは自分が『そうなった』からなのだろうか?

と、そこまで考えてコウは気づいた。寝ぼけていたせいで、頭がうまく働いていないようだ。そういえば今日、いや昨日、この子は―――

「ち、ちょっと待て!ユキナさん、『力』の使い過ぎで倒れたんじゃなかったか?それに、俺を病院に任せるとかいう方法もあったんじゃ・・・」

「それじゃ、私達のコトが世間に大っぴらにバレるかもしれないでしょ?それに、私ならもうだいじょぶだから」

と言って、また力なく笑った。疲労の色が濃い。

無理をしてくれているのだ。

その姿を見て、コウはたまらなく申し訳なくなって言った。

「・・・ごめん・・・助けるとか言っといて・・・口ばっかだわ、俺」

ユキナは優しく微笑んでコウを見ると、惜しみない慈悲の言葉を彼に向けた。

「いーのいーのぉ。私がやりたくてやってるコトなんだから」

それからわざと怒り顔をつくって言う。

「それより、私頑張ったんだから、『ありがとう』って言ってほしいな」

コウは一瞬虚をつかれたが、それもそうか、という気になって苦笑し、素直にお礼を言った。

「ありがとう」

「うん、じゃこっちも『ありがとう』」

秘技、『ありがとう返し』。ユキナの頬が心なしか赤らんでいる。

コウはその言葉の意味に一瞬気づけず、きょとんとなる。

ユキナが続けた。

「『助ける』とか言ってくれたんでしょ?」

コウは墓穴を掘っていた。

彼は焦りまくる。

「え、あ、ま、まぁ言ったっつか思ったっつか心の中で強く念じたというか訴えたというか咆えた訳で・・・」

ユキナはふふふと優しく笑うと、全身に喜色を表し、すっくと立ち上がって言った。

「うん、よし。じゃ、明日学校あるから朝早いし、髪黒くしなくちゃいけないし、もう寝るね」

少しどもって、ああ、と反応した直後、コウはふとユキナの言葉に違和感を覚えた。

『明日学校あるから』?

『髪黒くしなくちゃいけないし』?

まさか。

「ユキナさんも学校―――行くとか?」

「そだよ?コウ君と同じ高校」

言わなかったっけ、とユキナがきょとんとする。

コウは驚愕して叫んだ。

「はぁ!?編入試験とかは?」

「北海道に住んでた時、済ませたよ」

と言って、その時の状況諸々を、彼女は語りだした。

「私がどこ受けていいかわかんないって言ったらさ、コウ君のお母さんが『この学校なんか丁度いいよ』って、教えてくれたから―――」

なんだって、とコウは心の中で叫んだ。あの女は!

「―――受けちゃったの。そしたら受かっちゃったの」

簡潔で完璧な説明。

コウは驚きを通り越して呆れ果てた。そんなに前からの計画、もとい企みだったとは。

「成る、ほど、ね」

風鈴が、ちりんと音をたてた―――






翌日、コウは寝坊した。

残念なことに、勿論ユキナのつくった朝食にはありつけず、学校へ向けて必死に自転車をこいでいる。

いつもより40数キロと数キロプラスされた、自転車を。

コウの自転車の荷台には、少女が足を揃え、上手に染めた長い黒髪とスカートを手でおさえ、横座りしていた。

コウの右肩の竹刀袋には、あの刀『夕虹』が鞘ごと収められている。日本刀は竹刀と違って刀身がやや反り返っているので、道行く人に、中のものを悟られそうで気が気ではない。

もっとも、『そんなにジロジロ見られちゃいない』というのが本当の所。

「今日、学校、遅刻かも、な・・・」

コウが立ちこぎしながら、息を荒げてつぶやく。

後ろのユキナが泣き声をあげる。

「私初日から遅刻しちゃうの!?コウ君頑張ろうよ!」

「んなコト、言ったっ、て、さ、重―――痛!」

背中を何か固いもので殴られた。多分カバンだろう。

「いつもより、ってコトだよ!殴るなって!」

必死こいてチャリこいでんのは俺なんだからな、とかなんとかブツブツ言っていると、またユキナが後ろから声を張ってきた。

「あのさ、これ」

と言って後ろから差し出されたのは、黒くて短い、細い布きれ。端は焼き切れたのか、塗装のはがれたトタン板のように、茶色くなってしまっている。

コウは左手をハンドルから離してそれを受け取る。

一瞬、ユキナがつけるリボンかなと思ったが、その考えは後から体に伝わって来た情報によって、否定された。そのリボンからは、何か不可思議な力が感じ取れた。

「わかるでしょ?」

とユキナが確認する。

コウは視線を前方に向けたままそれに反応する。安堵のような気持ちを口に出してしまうのではないか、と思いながら。

「もしかして、これ―――」

「そう。誰かの『水注子』の一部、かな」

間髪入れずにコウが質問する。

「どこにあったんだ、これ」

「お庭。コウ君が炎で吹っ飛ばした塀とか石畳の瓦礫のそばに、落ちてたの」

庭に、と考えた後、コウは首をひねった。何故あの時気を失っていたこの子が、そんなことを知っているのか。

「え、なんで炎だってわかるんだ?俺の『力』が」

「共鳴で、大体わかるよ・・・」

と、彼女は言葉を濁した。

コウが正直言って期待していた「おめでとう」の類の一言は、なかった。彼女は心底、この能力を忌まわしいモノだと思っているに違いなかった。

その両方の理由から少々消沈しながらも彼は、左手にあるリボンをもう一度見た。

それは、あの『草薙イチト』と名乗った男のものではない、とコウは思った。

彼はあの『くさなぎのつるぎ』だとかいう剣を『水注子』(彼は『ジャグ』と呼んでいた)にしていたはずだった。

それになにより、彼の持っていた迅雷のような鋭い感じが、このリボンからは伝わって来なかった。

リボンから伝わって来るのは、心にぽっかりと穴が開きそうな、どうしようもない空虚感を感じさせる『力』の断片。

だが、そこでもう一つの可能性が浮かび上がって来る。

「じゃ、あの人が『水注子』二つ持ってた―――」

「それはないよ」

コウの言葉を遮り、ユキナはきっぱりと否定した。

「一人の『ブランカー』は一人の精霊さんとしか契約できないもん」

「どうして?」

「だって世襲でしょ?」

確かにそうだった。

『草薙イチト』には、誰かもう一人協力者がいたのだ。

「それじゃまさか、あの人は生きてるかもしれないのか?」

「多分・・・そのリボンさんに、助けられてね」

ユキナは一瞬黙り、それからまた苦苦しい声でつぶやいた。

「燃え残りも、なかったしね・・・人には水分あるから、あそこまでキレイに燃え尽きるはずないと思うよ」

冷静な見解。

この少女は心底『ブランカー』を憎み、また自分がそれと同じ存在であることを、忌まわしく思っている。

昨日怒り狂っていた時叫んだ言葉、態度、そしてあの冷たい氷の『力』を思い出して、コウはいたたまれない気持ちになった。

自分も『ブランカーに身内を殺されて』いたら、あんな風になってしまうのだろうか。

だが、ユキナの事を思いやりつつも、コウは正直『草薙イチト』が生きているかもしれないことに希望を抱かずにはいられなかった。

なにしろ、彼を手にかけてしまったのは自分なのだから。真偽はともかく、見た限り悪人ではない彼を、手にかけたかもしれないのだから。

実際、悪人を手にかけた場合でも、そう簡単には『自分は正義にもとって行動した』などと割り切れるものでもないだろうが。

だがそう思っても、ユキナに言おうとは思わなかった。

『命の重みは同じだ』などという奇麗事は、身内を殺された人間には到底受け入れられないだろう。

勿論、自分もその気持ちが多少なりとも理解できるからこそ、口に出さないのだが。


徒然考えている内、いつしか正門前。「県立富士見高等学校」と書いてある。

そのそばには、左右に大きな樹木が二本植わっており、その樹木の上では木漏れ日の中、セミが大合唱をしている。

ユキナが激しい陽光の下、急いで自転車から降りて、コウを急かす。

「早く早く!もう予鈴鳴ってから3分くらい経っちゃったよ!」

「あ、ああ」

ユキナが昇降口へぱたぱたかけて行く後ろ姿に、コウは声を張った。

まさかここまでは・・・とか思いながら。

「ユキナさんは、クラスどこなんだ?」

ユキナが木漏れ日の下で立ち止まって振り返り、口元に人差し指を当てつつ答える。

「んっと、確か・・・I組だったかな?」

―――コウは天の御力に対する感謝半分、恨み半分の溜息をもらした。




そして、教室。

コウ達は階段のある側、後ろの扉から中へ飛び込んだ。

それと同時に、黒板側の扉からも男女が二人、飛び込んできた。

「せーふっ!」

「セーフ、だね―――」

二人の声が重なった。

が、その声は『コウとユキナ』のものではない。

その声は『ユキナとイチト』のものだった。

半秒後、チャイムが鳴る。


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・


チャイムの余韻が残るまでたっぷりと、他の生徒がのろのろと席につく間、四人は見詰め合った。

コウと仲の良いクラスメートがユキナの姿をみとめ、なにか冷やかすような言葉をかけられたようだが、はっきりと聞き取れない。

見慣れない顔の三人、(ユキナ・イチト・と、もう一人)を見つけて訝しげに見て来る生徒もいるが、気にできない。

どうしてこんな所に、と思ううち、ユキナのうしろ姿、その髪がさぁっと白くなっていくのを見、コウは彼女の細腕をつかんで廊下に引きずり出した。

「―――馬鹿やろっ!」

幸い、どのクラスもSHRを始めたらしく、廊下には誰もいない。

「っ離して!離してよ!!」

彼女はもう完全に『発現』し、瞳も髪も色が元に戻っていた。首のチョーカーの石が淡く発光し、あの凍てつく冷気すら漂ってくる。

コウは全速で、彼女の腹を抱え、屋上へ続く階段へ引っ張っていった。


屋上へ出る扉のそば、机やその他用具類が積み上げられている所の小さな隙間に、彼女は押し込められた。

「どうして邪魔するの!?」

「当たり前だろ!なに、馬鹿な事やろうとしてんだ!!」

ユキナは激昂して、髪を真っ白に変貌させながら叫ぶ。

「うるさいうるさいうるさい!!家族を殺された私の気持ちが、コウ君にはわかるっていうの!?」

「そういうことを言ってるんじゃねェ!!」

このコトについて議論しても『今は』無駄だとコウは考え、キレ気味に論点をずらす。

「学校(ここ)で『力』を使ったらどうなると思ってる!」

ユキナは言葉につまり、口をつぐんだ。髪の白が少し弱まる。

学校で自分達が『ブランカー』だと知られたら、たちまち、尋常ならざる「お誘い」が来るのは間違いなかった。

そしてそれは、ユキナを必死に逃がしてくれた、彼女の家族の気持ちを無碍にすることに他ならなかった。

「それにあの人は、無理矢理あんたを連れ去ろうとはしなかったんだ」

ユキナは訝しげな表情になって、コウに尋ねる。

「・・・どういうこと?」

彼女の髪が、黒く力を失っていく。

コウはそれを見てほっと溜息をつくと、昨日、ユキナの意識が失われた後にあったコトを、一時限目不参加覚悟で、事細かく説明した。




ユキナはそれを聞いて、しばし考え込んだ様子を見せたが、とうとう言った。

「・・・わかった。もうちょっと様子見ることにするよ」

―――でも、と彼女。

「怪しい動きを見せたら、すぐに凍らせる」

二時限目開始のチャイムが、コウの溜息をかき消した。


で、教室。

のろのろと扉を開けながら、「遅れました」と声をそろえる二人。

コウの方はこの数十分間で、一気に老け込んだようである。

だが、さらなる悲劇が彼を襲う。

「おぉっと!おぉーっと桜井君!お待ちしておりましたよ」

・・・なんでだよ・・・

「その!そのぉっ!横にいる女性はどなたですかな!?今朝、腕なんか引いて連れ出したように見えたのは某(それがし)の錯覚でござるかな!?ハッハー!!」

一人で騒ぎまくっているのはこの2−Iのムードメーカー(時々皆にひかれるが)、飯塚アキラ。

皆の視線を一斉に浴び、コウは銃口を向けられた捕虜よろしく、たじろいだ。

が、とりあえず即興の言い訳を考え応戦、というか防御行動をとる。

「あ、あぁ、て、転校生なんだって、この子。で、教室へ行く道わかんないって言うから・・・」

まさか同居しているとも言えない。

が、防御行動をとっているコウの死角を貫く銃弾が、教壇より飛来する。

「おっと――、嘘はいけないねぇ、桜井コウ君――」

死に際、コウは自分の死角をついて来た奴が誰なのかを確認する。

英語の板書も書きかけに、教卓に頬杖なんかついて、あのヘラい笑いを浮かべてコウの隙をうかがっていたその男は、『草薙イチト』その人だった。

「な、なんであんたがココに・・・」

それが彼の遺言だった。

「はーい、もう一人転校生が来ました――」

と言うと、イチトは今まで当事者ながら蚊帳の外に追いやられていたユキナを手招きして、教壇へ呼んだ。

「富良野さん、来てください――」

ユキナは無言、手招きした彼を睨みながらゆっくりと教壇へのぼった。

「じゃ、自己紹介ね」

コウはその間、ユキナがまた『力』を使いだすのではないかと気が気でなかったが、とりあえず杞憂に終わる。

ユキナは促され、内容を考えていなかったのか、しどろもどろになりながらも、簡単に自己紹介した。

「ぇ、えと、名前が富良野ユキナといいます。好きな――ぇと、好きな食べ物は、バニラアイスです」

ぺこりと頭を下げる。

「不束ものですが、どうぞ宜しくお願いします」

和やかな拍手が起こる。活発な男子生徒が、「かわいいよー!」とか言いながら口笛を鳴らす。

ざわついた教室内をまとめ、イチトがコウ個人に言う。

「あ、それと、白井先生が一身上の都合により退職なさる事になったので、今日から俺がこのクラスの担任になりました――草薙イチトと申します――」

もう名前は知っている。にも関わらず、彼は芝居がかった態度をとっている。『字はこう書きます』という一連のやりとりは、なし。

なんだって!?とコウは思うが、クラスメートの手前、大声をあげる訳にはいかない。

よろしくね――、とイチトが、へらと笑い、間延びした声で言う。

その後、あっという表情になって、彼は続けた。

「おっと、忘れかけた。も、一個。桜井君と富良野さんはSHRいなかったからわかんなかったかもしれないけどね」

まだなんかあるのぉ?とユキナがうんざりする。

「もう一人転校生がいます」

あーはいはいそうですか、とコウが投げやりになる。

「俺の妹で――草薙セラピア、といいます」

もう勝手にして(くれ)(よぉ)―――ぇえっ!??妹(だって)(ぉ)!?っと、二人で驚愕する。

「手、出したら、裁きの雷(いかづち)が堕ちますからね?」

イチトが凶悪な笑みを浮かべると、コウは振るえあがった。

クラスメートは「ははは」と笑ったが、雷が落ちてくるというのは、実現可能な事なのである。

「じゃ、二人とも席ついて――、授業再開したいから――」

―――間。

「あ、桜井君はセラピアの隣。富良野さんはそこね――」

というイチトの言葉に、コウは慌てて席につく。その隣に、見慣れない女生徒がいた。

まず、髪が金茶色。その長い髪を、細くて黒いリボンで、頭の高い位置でツインテールにまとめ、ストレートに腰ほどまでたらしている。

瞳は青味がかった灰色。肌は白く、顔はやはりハーフかクォーターか、目つきはやや鋭いが端正で凛々しく、可愛いというよりは綺麗、という印象を受ける。

そしてとにかく身長が高く、膝上の黒のソックスをはいている足の長さの比率が大きい。立ち上がったらコウの鼻ほどまでありそうだった。

見れば、教室の隅に(コウの席は窓側、一番後ろ)これまた見慣れない大きな楽器のケースが置いてあった。

形的に弦楽器らしいが、ちゃんとした名前は、コウにはわからない。

コウが席につくと、セラピアといった少女は、強い眼差しで彼を射抜き、無表情気味に、

「よろしく」

と挨拶した。

コウは圧倒され、

「ぁ、うん。よろしく」

としどろもどろに返す。

と、

「おぉっと!おぉーっとぉ!?転校してきた二人の美少女(この言葉だけはツカイタクナカッタ!「作者談」)とこの桜井コウの間に!早くも三角関係が成立してしまったのかこの野郎!!?手が早いにも程があんぞ―――ハッハぁ!!!」

飯塚が再度まくしたてる。挨拶を交わしただけでこの騒ぎようである。

同居してるのがバレなくってホント良かった・・・などと安堵の溜息をもらしていると、

「あ、そうそう」

板書の手を止めたイチトが、コウの死体を雷で焼き払った。

「富良野さんは、桜井君ちに居候してるんだよね――」

「はい、そうです」

とユキナもにこやかに、表面上はにこやかに認めてしまう。

(言うなよ・・・)

コウは生徒全員からの好奇と怨嗟の視線を浴びた直後、怒涛の質問責めとサブミッション系攻めの奔流に、流されていった。

それを見て、独り、輪の外にいるセラピアが一言。

「馬鹿ね」



黒くて、細いリボン。彼は凛々しい横顔に気をとられ、彼女が何者であるか、考えるコトを忘れていた。




あとがきってか草薙兄妹のプロフィール。

草薙イチト
年齢:24歳
性別:♂
身長:184cm
体重:65`
能力は「迅雷」媒介物は「草薙の剣」。発現時、髪も瞳も薄紫。
ヘラい。シスコン。表面上は、イタリア人と日本人のハーフ。
語尾を伸ばす癖は、元ネタ有です。(探さないように
美形。髪は横広がりの、天然パーマ気味。
五話に出てきた服装は、アンゼリカのものに似せました。

草薙セラピア
年齢:16歳
性別:♀
身長:165cm
体重:43`(相場がわかりませんw 痩せすぎだ!とかいう文句があったらどうぞ)
能力は不明。媒介物は「私の無限リボン」。発現時、髪・灰、瞳・赤。
キツい。密かなるブラコン。表面上は、イタリア人と日本人のハーフ。
キツい性格って、俺の趣味かも。
ツインテールも、アンゼリカの趣味かも。
膝上黒ソックスも、作者の趣味かも。
文中に出てくる弦楽器は、チェロ。有名メーカー「アマーティ」のもの。
元ネタが死ぬほどあります。特に名前。聞きたい方はメールでどうぞ(いないって
元ネタ提供してくれた友人、本当にどうもありがとう。も・いっかい『本当にどうもありがとう』
一番考えあぐねたキャラクター。これからも追加事項あり。

最後に身長比べ

イチト(184cm)>コウ(174cm)>セラピア(165cm)>ユウコ(160cm)>ユキナ(155cm)>ハルカ(127cm)






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